遺言作成において、指定できる主な事


■ 遺言とは
亡くなると同時に身分上のあるいは財産上の事柄について、法律上の効力を生じさせようとする意思表示。


■ 遺言を作れる人は誰か
1)遺言をするときに満15歳以上である事
●未成年でも遺言については法定代理人の同意は不要。
2)遺言するときに意志能力がある事
●成年被後見人の場合は、遺言能力を回復していれば医師二人以上の立ち合いのもと有効に遺言できる。
3)言葉が不自由な人、耳が聞こえない人
●平成11年の民法改正により筆談や通訳を介して公正証書遺言の作成が可能となる。


■ 遺言の原則
1)遺言は必ず書面で法律に従って作成
2)1通の遺言書に複数人が共同で行う事はできない
3)いつでも遺言の一部または全部を取り消す事ができる

【遺言の撤回方法】
新たな遺言により前の遺言を撤回する
新たな遺言により、撤回したい内容に抵触する遺言をする
③遺言と抵触する財産処分をする
④遺言を破棄する
※公正証書は原本が役所にあるので、新たに書く必要あり。


■ 遺言で指定できる主な事

【身分に関する事】
1)認知
婚姻外で生まれた子を遺言で自分の子と認める。
2)未成年後見人及び後見監督人の指定
未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で親権者の代わりをする未成年後見人と、
これを監督する後見監督人を指定する事ができる。

【相続に関する事】
1)相続人の廃除及び廃除の取消し
遺留分を有する推定相続人が、被相続人を虐待したり、重大な侮辱を加えた時、
あるいは著しい非行を行った時、遺言で廃除する事ができる。(裁判所への請求が必要)
2)相続分の指定または指定の委託
被相続人は、遺言で共同相続人の法定相続分と異なった相続分を指定する事ができる。
この相続分の指定は必ず遺言によらなければならず、遺言の効力発生の時から、相続開始の時に遡って効力を生じ、各共同相続人の相続分が定まる。
3)特別受益の持ち戻しの免除
被相続人が特別受益の持ち戻しを希望しない場合には、遺言で持ち戻しをしなくて良いと意思表示をする事ができる。
4)遺産分割方法の指定または指定の委託
遺産分割方法の指定は遺言のみでき、遺産分割の方法には、
①現物分割の方法
②換価分割の方法
③代償分割の方法
④遺産を相続人間で共有させる方法
⑤特定の遺産を特定の相続人に取得させる遺産分割の実行の指定等がある
5)遺産分割の禁止
被相続人は、遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁止する事ができる
●遺産分割の禁止がもっぱら相続人の利益のためにされた事が明らかなときには、相続人の協議によって遺産分割を行う事は妨げられない。
●事情の変更により遺産分割を禁ずる必要がなくなった時は、相続人の協議による分割や審判による分割も可能とされる。
※遺産分割で確定しないと配偶者控除や小規模宅地等の減税措置が使えないので注意。
6)相続人相互の担保責任の指定
遺産分割で取得した財産が他人物であったり、人の権利が付着していたり、隠れた瑕疵があったりしたような場合に、その相続財産を取得した相続人を保護するため、他の相続人に対して、損害賠償請求や解除を求めることができるが、被相続人は、遺言によって、この相続人の担保責任を指定(変更)することができる。担保責任の指定は遺言によって行わなければならない。
7)遺言執行者の指定
遺言者は遺言で、一人または数人の遺言執行者を指定し、または指定を第三者に委託する事ができる。遺言の執行とは遺言の内容を実現する為の手続きのことをいい、遺言執行者は相続人の代理人とみなされる。
8)遺贈の減殺方法の指定
遺留分の減殺方法は法律により定められており、複数の遺贈の減殺については各自的物の価額の割合に応じて平等に減殺するのが原則だが、遺言者が減殺すべき金額を遺贈ごとに指定したり、各遺贈に対する減殺の順番を指定したりすることができる。
※遺贈=遺言による財産の贈与(相続人及び相続人以外(第3者))
※相続=遺言に関係なく発生する財産の承継(相続人のみ)

■財産継承に関するもの
1)遺贈
遺言により、財産を無償で相続人または他人に与える事ができる
2)一般財団法人の設立
遺言により、一般財団法人設立の意思表示する事ができる。その場合は定款の絶対的記載事項を定めて一般財団法人設立の意思を表示する事が必要である。
3)信託の設定
被相続人の財産について遺言で信託する事ができる。信託とは委託者が財産を受託者である個人や法人に移転し、一定の目的に従って管理や処分等を委託する事。

 

■その他
1)祭祀承継者の指定
遺言で祭祀承継者を指定する事ができる。祭祀承継者は相続人や親族以外の第三者を指定する事もでき、また複数人を指定することもできる。
2)生命保険受取人の変更
遺言により保険金受取人の変更ができる。しかしこれらの規定は平成22年4月1日施行の保険法施行の以降に締結された保険契約について適用されるものであり、それ以前に締結された保険契約には適用されない。