(1)譲渡所得の計算式
{収入金額-(取得費+譲渡費用)}× 税率 = 譲渡所得税
※不動産の譲渡所得は分離課税。分かりやすいサイト
(2)譲渡所得の対象となる不動産の異動
通常の売買の外、次のような行為による不動産の異動も譲渡となります。
①売買②交換③代物弁済④現物出資⑤離婚時の財産分与⑥負担付贈与⑦法人に対する低額譲渡⑧公共事業の為の収用⑨法人に対する贈与➉法人に対する遺贈⑪限定承認⑫代償分割にて金銭以外の財産を交付した場合
(3)収入金額
売買の場合は「売買金額」
(4)取得費
①実際の購入代金等が判明している場合
購入代金+関連支出(購入時の仲介手数料・不動産取得税・古家取壊費用等)
※建物の場合は上記金額を基礎に減価償却費相当額を控除
②購入代金が不明の場合
収入金額の5%
(5)譲渡費用
資産を譲渡するために直接的かつ通常支出する費用で、次のようなものをいいます。
①仲介手数料②契約書に貼った印紙代③測量代④古家等を取り壊した場合の取壊費用
⑤借家人に支払った立退料⑥その他収入金額を増加させるために支出した費用
(6)税率
所有期間の長短に応じて、所得税及び住民税の税率が定められています。
所有期間 | 所得税(国税) | 住民税(地方税) | 合計税率 |
5年超(長期) | 15% | 5% | 20% |
5年以内(短期) | 30% | 9% | 39% |
(7)所有期間
①期間の数え方
譲渡した年の1月1日から起算して5年が超えるかで判定
平成28年中の譲渡は
取得日が平成22年12月31日以前 → 長期譲渡(20%)
取得日が平成23年1月1日以後 → 短期譲渡(39%)
②相続や贈与によって取得した不動産の場合
被相続人や贈与者がその不動産を実際に取得した日を承継
※ 相続開始日の相続税評価額でない。
(8)相続財産を譲渡した場合の特例(取得費加算)
①概要
相続財産の譲渡が相続の直後に行われる場合、特に相続税納付のために相続財産の
譲渡が行われる場合には、その相続財産に対して相続税はもちろん、譲渡することで認識される値上がり益については、譲渡所得税が連続的に課税されます。
この相続税と所得税の負担の調整を図るために昭和45年に創設された制度です。
②譲渡所得の計算式
{収入金額 - (取得費+相続税の一部+譲渡費用)} × 税率
③適用要件
イ.相続財産を
ロ.相続開始日の翌日から3年10月以内に譲渡すること
※ 「相続税を納付するために」の要件はない → 譲渡の目的を問わない
④加算される相続税額(相続開始日に注意)
イ.平成26年12月31日までに相続開始
ロ.平成27年1月1日以後に相続開始
(9)マイホームを譲渡した場合
①3,000万円特別控除
●譲渡所得の計算式
{収入金額 - (取得費+譲渡費用) -3,000万円} × 税率
●主な適用要件
イ.自己の居住用の土地等、建物であること → 別荘や仮住まいはダメ
ロ.配偶者・直系血族・生計一親族・内縁関係にある者等への譲渡でないこと
ハ.前年・前々年のこの特例、買い替え特例等を受けてないこと
※所有期間の長短は問わない
②軽減税率
●譲渡所得の計算式
{収入金額 - (取得費+譲渡費用) -3,000万円}× 軽減税率
※3,000万特別控除と併用OK
●主な適用要件
イ.上記3,000万円特別控除の適用要件
ロ.国内にある自己の居住用の土地等、建物であること
ハ.所有期間が10年を超えること
●軽減税率
譲渡所得金額 | 所得税(国税) | 住民税(地方税) | 合計税率 |
6,000万円以下の部分 | 10% | 4% | 14% |
6,000万円超の部分 | 15% | 5% | 20% |
~その他の不動産譲渡におけるポイントを紹介します~
【固定資産の交換特例】
(1)概要
固定資産の交換については、担税力の観点から、その譲渡がなかったものとみなして課税の繰り延べができます。
マイホームを譲渡した場合の各種特例と異なり、親族間における交換であっても適用が認められることから、親族間等の財産整理等の場面で利用されたりもします。
(2)適用要件
①交換譲渡資産と交換取得資産(=相手方の譲渡資産)の所有期間がともに1年以上であること
②交換取得遺産は、交換の相手方が交換のために取得したものではないこと
③交換取得資産を、交換譲渡資産と同一用途に供すること
④土地と土地、建物と建物ように同一種類の固定資産の交換であること
⑤交換資産の時価の差額が、いずれか高い方の20%以内であること
【マイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除】
(1)概要
住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの債務残高を下回る価額で売却して損失が発生した場合には、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得等他の所得から控除(損益通算)することができます。
さらに、翌年以後3年以内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。
(2)主な適用要件
①所有期間5年超の国内の居住用財産であること
②そのマイホームに係る償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること
③マイホームの譲渡価額が住宅ローンのの残高を下回っていること
④前年、前々年に3,000万円控除、軽減税率等を受けていないこと
【相続税の物納に充てた土地等】
物納も「譲渡」に該当しますが、譲渡所得は非課税として扱われます。
【専業主婦の不動産譲渡と夫の配偶者控除】
専業主婦が不動産を売却等した場合にも当然譲渡所得が発生します。
譲渡所得の発生により、その年の合計所得金額が38万円超となった場合にはその年の夫の税金計算にて配偶者控除(扶養としての控除)を受ける事はできない。
合計所得金額とは、3,000万円控除等の特別控除前、譲渡損失の繰越控除前の各種所得の合計金額をいいます。
【不動産譲渡と国民健康保険(税)】
国民健康保険の計算対象となる所得割額には、不動産の譲渡所得金額も含まれます。なお、平成15年より税金計算上の3,000万円控除等の特別控除が国民健康の計算においても控除が認められるようになりました。