リース取引の仕訳

ファイナンスリースとは、リース物件価額の大半を借り手が賃借料として支払うタイプのごく普通のリース。実態はほぼ購入。途中解約不可、故障費用負担。
つまり、リース会社が代わりに購入してくれて、貸してくれている状態。

さらに、ファイナンスリースは「所有権移転」「所有権移転外」に分かれる。
所有権移転リースとは、リース期間満了時に借り手が無償で所有権を獲得できる。
①リース契約書に無償や格安で借り手に所有権を譲渡する項目が記載されている。
②借り手しか利用できないような特別仕様の設備等の場合。
③リース期間が設備等の耐用年数より相当短い(70%未満)。
所有権移転外リースは、上記以外
※所有権移転 → 物件の分割購入。実際価格より高い。リース期間が70%未満で短い分、毎月の支払額は大きい。
※所有権移転外 → 使用権の購入。リース期間が長い分、毎月の支払額は低い。
契約後も使用するためには、再リース料や買い取り費用を別途支払うことが必要になる。
※実務上、契約書で物件の返還および清算の条項を確認する。返還の記載があれば所有権移転外リース。

ファイナンスリースのメリットは、所有権はリース会社なので、税金(固定資産税・償却資産税)の申告や納付を行う必要がない。

税務上

  所有権移転 所有権移転外
取得時 売買処理として資産計上 売買処理として資産計上(例外:中小企業や少額物件の場合は、賃借料で処理する事も認められる。
減価償却 一般の設備等と同様に減価償却 リース期間定額法で減価償却
償却期間 設備等の耐用年数 リース期間
消費税 取得事業年度に消費税の課税仕入として一括仕入控除 取得事業年度に消費税の課税仕入として一括仕入控除

仕訳方法

所有権移転ファインナンス・リース取引

【経済的実態】
借入をして、資産を購入したものと全く同じです。

【前提】
キャッシュで買った時の値段:5,000,000円
リースを組んだ時の支払総額:6,000,000円(※120,000円を50回支払うとします)

【取得時】
リース資産 5,000,000円 / リース債務 5,000,000円

リース資産は、キャッシュで購入した時と同じ金額で計上します。
リース債務は、リース総額ではないので注意して下さい。
実務上、長期リース債務(1年超)とリース債務(1年以内)にわけたりします。

【リース料支払い時】
リース債務 100,000円 / 現金 120,000円
支払利息   20,000円

毎月のリース額120,000円は、借入金の返済を行う時と同じく、元金部分と支払利息部分に分けられます。重要性が乏しい場合は、簡便な利子込み法も認められています。
今回のケースでは支払利息を簡便的に計算していますが、実務では毎月円単位で支払利息の金額が変動する複雑な計算が必要です。

【決算仕訳】
資産計上されたリース資産に対して減価償却費を計算しますが、キャッシュで資産を取得した場合と全く同じ算出方法で減価償却費を計算します。

所有権移転外ファインナンス・リース取引

【経済的実態】
上記とほぼ一緒ですが決算仕訳だけ違います、最後はリース資産を貸主に返却しなければなりません。そのため、残存価額をゼロとして減価償却費を計算します。

【前提】
キャッシュで買った時の値段:5,000,000円
リースを組んだ時の支払総額:6,000,000円(※120,000を50回支払うとします)

【取得時】
リース資産 5,000,000円 / リース債務 5,000,000円

【リース料支払い時】
リース債務 100,000円 / 現金 120,000円
支払利息   20,000円

【決算仕訳】
減価償却費 1,200,000円 / リース資産 1,200,000円

リース期間定額法という「所有権移転外ファイナンス・リース取引」専用の償却方法で減価償却費を計算します。リース資産総額を、リース期間で月数按分して、その事業年度の減価償却費を計算します。
(減価償却費1,200,000円)=リース資産5,000,000÷リース期間50ヶ月×事業年度12ヶ月

【例外が認められています】
所有権移転外ファイナンス・リース取引は最終的には借主に返すので、経済的実態としては所有権移転ファインナンス・リース取引よりも、オペレーション・リース取引に近い性格も持っています。
そのため、次の場合には月々のリース料を費用処理するだけのオペレーション・リース取引と同じ処理も認められています。

借主が中小企業である場合
リース期間が1年以内のリース取引
リース契約1件あたりのリース料総額が3,000,000円以下の場合

オペレーション・リース取引

【経済的実態】
リース資産を契約期間の間だけ借りているだけで、資産を取得しているような実態はありません。

【前提】
キャッシュで買った時の値段:5,000,000円
リースを組んだ時の支払総額:6,000,000円(※120,000を50回支払うとします)

【取得時】
仕訳なし

【リース料支払い時】
リース料 120,000円 / 現金 120,000円

【決算仕訳】
仕訳なし

さらに、実務上は、リース資産の借り換えをする事が結構あります。
この場合は、契約書を見て計算していく事になりますが、ここからは備忘なのであくまで参考程度で見て下さい。

以下、税込
① 新リース総額を把握。 仮に5,000,000円
② リース対象額を把握。 仮に4,600,000円
差額 400,000円(リース手数料)

③リース対象額の構成を把握。仮に(新資産4,000,000円+旧リース解約料600,000円)

④リース手数料を新資産と旧リース解約料に按分。
4,000,000/4,600,000 → 87%(新資産)
600,000/4,600,000 → 13%(旧リース解約料)
↓下に按分
400,000 × 87% = 348,000円(新資産へ追加)
400,000 × 13% = 52,000円(長期前払費用としてリース期間で計上)

仕訳
リース資産 4,348,000    /長期リース債務 5,000,000
長期前払費用 52,000
雑損失 600,000

※長期前払費用は60回で計上、支払利息 / 長期前払費用 866(月額)